Q1.銀行は融資の面接の時にどのようなことを聞いてくるのでしょうか?
A1.銀行は「どうしてこのような決算書になったのか」を知りたがっています。
特に数字の背景が知りたいのです。
粗利益がなぜ落ちたか、勘定科目の内容、売掛金の増加など、表面的に見ていてはわからない内容をしっかりと伝えるようにしてください。
当然、数字を伴った説明が必要です。
銀行は数字に弱い社長を信用しません。
会計事務所が決算の時に決算書を説明してくれると思いますが、これは社長が銀行に決算書を説明する時の「模範解答」になります。
銀行がよく質問する内容は次のような内容です。
・売上が増減した理由
・業界の状況(他社の状況・業界の展望など)
・粗利が変化した理由
・PLの中の大きな勘定科目、珍しい勘定科目の内容
・特別利益、特別損失などの内容
・売掛金が増加した理由、売掛金のサイト
・在庫が増加した理由、回転率、原価率
・仕掛品の計算根拠
・固定資産の内容
・他行からの借入残高、返済予定日
Q2.月々の返済額として適正な金額はどれくらいと考えれば良いでしょうか?
A2.適正金額の目安として次の算式を用いることがあります。
(税引き後利益+減価償却費)÷12
借入金の返済は当然経費になりませんから、税金を支払った後に残った利益から返済するものです。
しかし、減価償却費は経費と言え、キャッシュアウトを伴わない経費ですので、返済の原資になりえます。
よって上記の式で求めた額が毎月の返済額としての目安になります。
Q3.年末年始に銀行に挨拶に行くのは融資に有利になるのでしょうか?
A3.年末年始の銀行まわりが直接融資に有利になることはありません。
ただし、支店長などの上位役職者に好印象を持ってもらうことは、稟議書が行内で廻ってきたときに人情的にプラスになることはあるようです。
もちろん、スコアリングが重視であることに変わりはなく、プラスになると言ってもほんの少しだけですが。。
Q4.借入金の残高は年商の1年分が上限だというのは本当でしょうか?
A4.はい、目安としては正しいとお考えください。
実際は保証協会の融資枠の残高なども勘案することが必要ですが、概ね年商1年分が借りられる上限と考えてください。
また運転資金は「月商の2ヶ月分まで」が目安になります。
Q5.「金融検査マニュアル」とは何ですか?
A5.「金融検査マニュアル」とは1999年に金融庁が出したもので、本来は金融機関を査定する金融庁の職員向けのものでしたが、査定される側の銀行も査定結果を上げるためにこのマニュアルに従って融資をするようになりました。
「金融検査マニュアル」の中で中小企業にとって知っておかなければならない重要なことは「融資先のランク付け」があるということです。
簡単にいうと、融資先は「正常先」「要注意先(非要管理先)」「要注意先(要管理先)」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」の6区分にランク分けされます。
金融機関は「要注意先」より下のランクの融資先については企業の倒産に備えるための「引当金」を積むことが必要となりました。
「引当金」は金融機関にとって「費用」になります。
つまり利益を圧迫するのです。
ですので金融機関としては、リスクの高い客に貸せば貸すほど多くの引当金を積まなければならなくなり収益を悪くするので貸したくないのです。
結果的に良いところにはどんどん貸すが危なそうなところには貸さないといういわゆる「貸し渋り」に繋がるのです。
Q6.銀行は融資先を格付けしているというのは本当ですか?
A6.はい。本当です。
この格付けを「スコアリング」と言います。
金融庁の指導のもと「金融検査マニュアル」に従って融資先を格付けします。
格付けは5段階にされ、以下のようになっています。
①正常先・・・・・業績に問題なく財務内容も問題なし
②要注意先・・・・業績不調で財務内容に問題あり
③破綻懸念先・・・経営難の状態で経営改善計画が進んでいない
④実質破綻先・・・深刻な経営難の状態で再建の見込みもなし
⑤破綻先・・・・・法的に破産
この区分に担保の状況を加味して最終的に格付けがなされます。
銀行はこの格付けでの融資の態度が変わります。
正常先で財務内容も良ければ安い金利で大きな金額の融資をしてくれます。
逆に格付けが落ちると金利は上がり融資額も減ります。
つまり儲かっている会社にお金をドンドン貸そうとするが、苦しくて本当に融資が必要な会社には貸さないということですね。
これが「銀行は晴れた日には傘を貸すが、雨の日には貸さない」と言われる所以です。
将来の資金需要が見えているのであれば、業績が良い間に安い金利で借りておいて使わずに手元に置いておくのも良い経営判断でしょう。
また③の破綻懸念先から⑤の破綻先に区分されると融資は不可能になります。
Q7.スコアリングの格付けで①の「正常先」と②の「要注意先」は、具体的にどのように区分されるのですか?
A7.「正常先」と「要注意先」の分かれ目ですが、次の3つのいずれかに該当すると正常先から要注意先に転落します。
1.実質経常赤字であること
2.実質債務超過であること
3.債務償還年数が多大であること
実質経常赤字とは一過性の経費(役員退職金や固定資産売却損などの特別損失)が原因で赤字になったのではなく、通常の商売で赤字になっている状況を言います。
実質債務超過とは、「資本の部」–「社長貸付金」–「繰延資産」–「長期前払費用」が赤字になった場合を言います。
債務償還年数とは「借入金残高」÷「税引後利益+減価償却費」で求めた年数を言います。
これらの基準は金融機関によって判断が異なり、例えば1年でも実質経常赤字になると要注意先になる銀行もあれば、2年連続でなった場合に要注意先になる銀行があるなど一定していません。
債務償還年数も10年以上になったら要注意先になる銀行もあれば20年以上で要注意先になる銀行もあります。
査定の甘い金融機関と付き合うのも重要な経営判断です。
Q8.繰上返済は嫌がられるのでしょうか?
A8.基本的に嫌がられます。
お金を返すほうからすると早く返すのだから文句ないでしょうと思うかもしれません。
しかし、銀行はお金を貸して利息を稼ぐのが仕事です。
銀行マンに貸し出しのノルマがあるように、「良いところに多く貸し続ける」ことが理想なのです。
長い目で銀行との付き合いを考えるのであれば、一括返済は避けるほうが無難と言えるかもしれません。
Q9.会社を設立して間もないのですが、メインバンクはどこに作るのが良いのでしょうか?
A9.メインバンクをどこに作るかは正解があるものではありません。
振込先に都市銀行を持っていれば取引先に対してイメージが良くなります。
しかし都市銀行だけと取引していると会社の業績が落ち出した時に融資が出にくかったり、社会情勢の変化で大企業中心に融資を行い中小への枠が減るといったことも考えられます。
これは考え方の問題ですが、最初の地銀や信用金庫をメインバンクにしておいて会社の成長に合わせて都市銀行へシフトするのが良いでしょう。
Q10.繰越損失のマイナスが大きいと金利が上がるというのは本当ですか?
A10.はい、本当です。
銀行が資本の部を重視することはお伝えしました。
資本の部がマイナスの「債務超過状態」は融資の土俵に乗りませんが、繰越損失が大きいこともやはりマイナス評価につながります。
この場合でも2年以内に消せる繰越損失の額であれば、比較的マイナスは軽く見られますが、2年で消せないくらい大きな繰越損失は問題視されます。
ただし代表者の預金や代表者の不動産があればプラス要素として加味してくれます。
Q11.昔に別の銀行で申し込んだ保証協会で返済が滞り、貸倒れたことがあります。こういったデータは残っているのでしょうか?
A11.はい、残っています。
保証協会での事故はもちろん、クレジットカードなどの民間のデータもCICという機関で共有されています。
昔に返済事故を起こしていたり、リスケをしている場合は原則融資はできないと思ってください。
Q12.融資を受けようとする会社に関連会社(株主が同じ)があります。この場合関連会社の業績は融資に関係しますか?
A12.はい。株主が同じ関連会社があればデータを合算して融資の判断を判定することがあります。
銀行としては子会社をトンネル会社として使って赤字の親会社に資金を廻されることを警戒していますので、関連会社がある場合は合算します。