法人化のデメリットについて

交際費

個人の場合、交際費は事業遂行上必要なものは全額必要経費として認められますが、法人の場合は損金に算入できる限度額が定められているため、一部又は全額を損金算入できない場合があります。

赤字でも税金がかかる

個人事業の場合、赤字であれば所得税、住民税、事業税はかかりません。

ところが、法人では住民税の均等割がかかります。住民税の均等割は資本金等の額や従業員数に応じて課税されるものですので、たとえ赤字であっても課せられます。税額は自治体により多少異なりますが、年間最低7万円程度です。

なお、正確には、個人事業の場合でも数千円の住民税の均等割が課せられますが、条例でも定める一定額以下の所得の人は非課税となります。

また、資本金の額が1億円を超える法人の場合、事業税の外形標準課税の対象となり、赤字でも税金が課されます。

社会保険料の負担が増える

社会保険は、個人事業の場合、従業員が5人未満であれば任意での加入ですが、法人化すれば、たとえ代表者1人であっても社会保険に強制的に加入となりますので、社会保険料の負担が新たに発生します。また、労働保険は個人事業者の場合でも、従業員が一人でもいれば加入を強制されますが、法人化に伴い初めて従業員を雇った場合は、新たに労働保険料の負担も発生します。

登記が必要

個人事業の開始には登記は必要ありませんが、法人設立の場合は、必ず設立登記が必要となります。さらに、役員変更登記も一定期間ごとに必要となります。自分ですることもできますが、手続が煩雑なため、通常、司法書士などの専門家に依頼します。

設立登記のための費用は、定款認証、登録免許税、司法書士報酬などの20万円以上かかります。

会社のお金を自由に使えない

個人事業者の場合、事業により得たお金は自分で自由に使うことができますが、法人化すれば会社の財産と個人の財産は明確に区分されるため、経営者といえども会社のお金を自分のために使うことはできません。

なお、会社からお金を借りる場合は金銭消費貸借契約書を交わし、利息を支払う必要があります。

税務調査が入りやすい

法人は、個人事業者に比べ税務調査が入る機会が増えます。一般に法人の方が個人事業者より事業規模が大きいことなどがその理由と考えられます。

複式簿記による帳簿が求められる

個人事業者の場合は65万円の青色申告特別控除を受ける場合のみ複式会計簿記の採用が求められますので、複式簿記による帳簿の作成は必須ではありません。実際、白色申告者も多く、青色申告の場合でも10万円の青色申告特別控除を受ける場合は複式簿記による会計帳簿の作成が不要ですので、自分で売上げと経費を集計して申告することも可能です。

しかし、法人では青色申告をすることが通常ですので、複式簿記による会計帳簿の作成が必須となります。また、先に述べたように税務調査が入る機会も増えるため、通常、税務顧問業務を会計事務所に依頼することになりますので、そのコストもかかります。

事務負担が増える

法人化すれば、厳密な会計処理が求められるため、事務負担が増えます。また、社会保険や労働保険の手続きも経常的に発生します。さらに、株主総会の開催、役員変更登記など法律上求められる手続も必要となり、個人事業者の場合に比べ格段に事務負担が増えます。

重要事項の決定に決議が必要となる

個人事業であれば意思決定は自由にできますが、法人化すれば、意思決定に株主総会や取締役会の決議を必要とする事項が会社法に定められているため、これに従うことになります。

貸倒引当金の法定繰入率が低い

一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の法定繰入率は、個人の場合、所得税法においては対象額に1,000分の55(金融業者は1,000分の33)を乗じますが(所法52 所令145)、法人税法においては法定繰入率による場合、業種により1,000分の6~13を乗ずることとなり(法法52、措法57の9、措令33の8)、法人の方が費用処理できる割合が低くなります。ただし、法人税法では前3年内事業年度において貸倒損失が発生している場合、当該貸倒実績率に基づき一定の方法により計算した繰入率を用いることができます。

低額譲渡や贈与では譲渡人にも時価譲渡による課税がされる

個人が個人への時価よりも低い価額で財産を譲渡した場合、譲受人には時価と購入価額との差額に対して贈与税がかかります(相法7)が、譲渡人には、実際の売却価額(譲渡価額)から、その財産の取得費などを差し引いた所得に限り所得税がかかります。もし取得価額よりも低い価額で売却した場合は、原則として税金はかかりません(所法59)

しかし、法人化後、個人で保有していた財産を法人へ低額譲渡するとき、所得税法上の時価の2分の1未満で売却する場合や、時価の2分の1以上で売却する場合であっても「同族会社等の行為又は計算の否認」(所法157)の規定に該当する場合、譲渡人である個人については、いわゆる「みなし譲渡所得課税」がかかります。すなわち、実際の売却価額ではなく時価で売却して収入があったとみなされ、その収入から取得費等を差し引いた所得に対して所得税がかかります(所法59、所令169)。そのため、取得時より値上がりしている土地などの含み益がある財産を、法人に売却した場合、財産を売却した個人にも税金がかかることになります。他方、譲受人である法人については時価と取得価額の差額分が受贈益となり、法人税の課税対象となります(法法22②)。

さらに、同族会社に低額譲渡した場合、株式等の価額が増加すると、増加した部分に相当する金額を株主は贈与されたとされ(相基通9-2)、その同族会社の株主にも贈与税が課税されてしまいます。なお、贈与の場合も同様の取扱いとなります。